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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)178号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とす。

理由

上告代理人弁護士菅野虎雄の上告理由第一点について。

甲所有の不動産につき、乙のため所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に、甲が右不動産を丙に譲渡し移転登記をなした場合において、乙は、丙のためになされた所有権取得登記の抹消登記手続をなすことなくして、甲に対し所有権移転の本登記手続に必要な協力を請求することができると解すべきである。論旨引用の各判例は、その後の判例(大審院昭和七年八月五日決定、法律新聞三四五三号一五頁、昭和八年二月一七日判決、民事判例集一二巻二三七頁)によつて自ら変更せられたものと認むべく、所論は採用することをえない。

同第二点について。

原審の確定したところによれば、控訴人(上告人)は、昭和二二年一一月一一日訴外後藤亀信の被控訴人(被上告人)等先代に対する債務を引き受け、且つ右債務の担保として昭和二三年三月一日右先代に本件不動産の所有権を譲渡したというのであるから、その後これを原因として右不動産につき同人のため仮登記がなされたとすれば、それは登記申請に必要な手続上の条件が具備しないものとして、不動産登記法二条一号によつてなされるべきであつたことは所論のとおりである。しかし、右一号の仮登記も同条二号の仮登記も、結局後日なされる本登記の順位を保全するためなされるものであるから、同条一号の仮登記によるべき場合に同条二号の仮登記を申請し、該申請が受理せられて、すでに二号の仮登記がなされた以上、これを無効とすべきではなく、やはり順位保全の効力を有するものと解するのを相当とする。論旨引用の大審院判例は、当裁判所の採用しないところである。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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